冬菜かしこの「のんびり ゆっくり 親孝行」の日々

70歳代後半の親と50歳代前半の娘のゆるい介護のような親孝行の記録です

春休みの訪問

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こんにちは、冬菜かしこです。

今日は暑いくらいの青空の一日です。

 

昨日、二人娘を連れて実家に行ってみました。

自転車で20分、駅から電車で15分、隣の市の駅からバスで30分。

今回は乗り換えがうまくいったので、

歩きを入れても1時間半ほどで行けました。

とはいえ、自分一人とは違い、

自転車では車との接触を気を付け、

駅ではホームでの電車の通過を気を付け、

電車内やバス内では話し声の大きさに気を付け、

結構つかれました。

やはり公共の交通機関と言うのは、

大人使用になっているなと、つくづく感じました。

 

夏休みも冬休みも、そして春休みも。

基本的には主人に車で帰省してもらうだけで、

大体ひと月に1回くらいになってしまいます。

だから先日の帰省の際に

「春休みは子供がいるから、実家には行けないかもしれない」

と実家の母には伝えておきました。

 

母も仕方ないことだと思っていたし、私もそう思っていました。

でもおととい、ふと、数か月前に足を悪くした母のことを思うと、

何週間も実家に帰省しないのは、

やはり、ちょっと心配になったのです。

 

だからと言って、下手に「春休み、行くよ」と言っておいても、

行けなかったら悲しませます。

だから今回は直前まで、黙っていようと思いました。

 

前日に「おばあちゃんち、行く?」と聞くと、

二人娘は喜んで「行くー」と言っていました。

「早起きできたら行くから」と頼んでおいたら、

当日、きちんと早起きして、支度も自分でしていました。

 

母には、一応、朝出かける前に電話してみたものの、

「今韓流ドラマ見ているから」

と言っていたので、

「分かった、ごめん」とすぐに電話を切りました。

そして、サプライズで訪問することにしました。

 

自転車と電車とバスを乗り継いて、一時間半の遠い道のり。

途中、市民農園で白菜の花を切ってお土産にし、

パン屋さんで母のお気に入りのパンを購入しました。

やっとの思いで実家につくと、母は台所にいました。

 

「来たよー」と母に声をかけると、

最初は少々驚いたものの、すぐに状況を理解して、

「子供も来たの?」と聞いてきてきました。

そのすぐ後に、顔を出した次女が、

「おばあちゃんに、花束、はいどうぞ」と、

白菜の花の花束を出すと、

母は嬉しそうにそれを受け取っていました。

 

「お父さん、これから散髪に行くから。

ちょっと送ってくる」と言って、

私たちが着いて早々、

母は父と一緒に自転車で出かけました。

そして30分後に、いったん家に帰ったものの、

しばらく待っても、父が散髪から戻ってこないので、

「お父さん、散髪終わったのに、帰ってこないから。迎えに行ってくる」

と言って、散髪屋さんまで自転車で出かけました。

 

母が自転車に乗れるほど足腰が回復したのはうれしいです。

でも、散髪ひとつ自分で行けない父の世話をしているのを見ると、

ちょっとため息が出そうになりました。

 

何でも母が手を貸してあげなくてはいけないのです。

散髪屋さんに迎えに行く時、

「疲れますのよ」と明るく言っていましたが、

きっと、明るく言えないときも、

少なくはないのでしょう。

昔から弱音を吐かない母の本音を聞くと、

なんともいえない不安が胸の中に広がります。

 

そういう時は、

「大変だね」と共感してあげることが、

母の背負っている重い荷物を軽くしてあげる

せめてもの親孝行だと思って言葉をかけています。

 

母が私たちのために買ってきてくれた、

巻きずし、チキンフライ、牛すじ煮込み、をお皿に並べ、

私が作った焼きそばも隣に並べ、

お昼ご飯を頂きました。

 

散髪から戻った父は、私が作った焼きそばには箸をつけず、

「りんごをむいてくれ」と言うのでむいてあげると、

一口食べて「もういらない」と席を立ちました。

母は私と目を合わせ

「これ、困るでしょー」と言ってきました。

「本当だね」と私も合わせ、結局、

「おなか減ったら何か食べるでしょう」ということにして、

さして心配はしないことにしました。

 

その後、子供のために、母が買ってきていたモールで

二人娘はアクセサリーを作り、

その後、近所の100円ショップに出かけて、

それぞれの好きなものを買いました。

 

持ってきた菜の花を花瓶に生けるのも

手伝ってくれました。

ビオラの花の鉢を道路に近づけてくれる?」

と母が頼んできたので、長女と一緒に鉢を持って移動させました。

「お花をみんなに見てもらおう」

と言って、母は嬉しそうに眺めていました。

 

「3時過ぎには帰るから」と言って、

2時半頃からお茶の時間にしました。

ジュースやコーヒーと、お菓子をいただきました。

お土産に持ってきた、母のお気に入りのクルミパンと、

父は大福もちを食べていました。

母はコーヒーを飲みながらお喋りをするのが好きなので、

今日も一緒にお喋りしました。

 

「お父さん、デイサービスを週3回にすることにしたわ」

と母が言うので、

「うん、それがいいね」とこたえました。

「週2回だと、どうしても、間に3日間の空き時間が出来て、

退屈そうにしているから」

と母が理由を説明するので、

「そうだね、週3回、いいと思うよ」と賛成しました。

 

「お母さんも、デイサービス行ったら?

新聞の読者欄に載っていたところ、行くんじゃなかったの?」

と聞いてみると、

「それなんだけど、デイサービスより、何か習い事に行こうかと思うの」

と意外な答えが返ってきました。

「デイサービス行かないの?」と念を押すと、

「うん。デイサービスはいつでもいけるから。

今しか行けないところに、行きたいと思って」

と言っていました。

 

「足腰が悪いのだから、送迎付きの、デイサービスの方がいいのでは?」

とも思いました。

だけど。

「今しか行けないところ」が大切なのだと思いました。

 

この先。

どんどん年を取って、体が動きにくくなったら。

おそらく普通の習い事は行きにくいでしょう。

健康のありがたさを一番感じているのは、

他の誰でもない母なのです。

 

「うん。いいんじゃない?

デイサービスもいいけどね。習い事もいいよね」

私は母に賛成しました。

 

「前にあなたが言っていた通り。

何か習い事をしてみようと思うのよ」

と母が言ってくれました。

 

いつ言ったのか、

どんな場面で言ったのか、

どんな意図で言ったのか。

 

いまでは私自身でさえ覚えてはいません。

それでも。

母の心の中には、私の言葉がしっかりと刻み込まれていたようです。

そのことが、あまりにもうれしくて、

私の胸は少しだけ、あつくなってしまいました。

 

お昼前。

「見て見て、かわいいでしょ?」

と母が庭をみるように促すので、

私もそちらに目をやりました。

庭にはすずめが数羽、もう少し大きい鳥が一羽、

仲良く落ちているパンくずをついばんでいました。

 

「お父さんが食べたパンのくずを、

食べに来ているの」

そう言って母は頬をゆるめて、楽しそうでした。

「今朝のパンのくずをまいておこう。

お父さんが帰ったら、鳥を見て喜ぶから」

そういうと母は庭に出て、

ぱんくずをまき始めました。

すずめも大きい鳥も一斉に羽ばたいて、

どこかへ行ってしまいました。

突然の人間の出現に、驚いてしまったようです。

それでも母は全く気にせず、

パンくずをまいていました。

 

その様子を見ていて、

「ああ、そうだった」

と、ふと父のことを思い出しました。

今はもうないけれど、ゆすら梅の木が庭にあったころ、

父はいつも、その梅の赤い実を全部は食べず、

半分くらいは残していたのです。

「むくどりが食べに来るから」と、

満面の笑みでそう言っていました。

鳥が来て赤い実を食べるのを見るのが、

楽しくて仕方ない様子だったのです。

 

「鳥のふんがすごいのよ」と母はいつもこぼしていましたが、

もしかしたら、それでも、そういう父の優しいところが、

いいなあと思っていたのかもしれません。

 

私は昨日も父の手を握り、

「また来週、すぐに来るから」

と言って、実家を後にしました。

 

ゆすら梅の事を、父は覚えていないかもしれません。

それでも。

母も私も父の優しい行動を、

忘れることが出来ないのです。

 

そこにいてくれるだけで。

ただ、そこにいてくれるだけでいい。

 

もしかしたら、母も私もそう思っているのかもしれません。

どんなに、大変な毎日でも。

大切な思い出が輝いている間は、

少しだけ頑張れるのかもしれません。

 

母と一緒に、手に手を取って、

これからも歩いていこうと思っています。

 

明日も良い一日になりますように☆