介護ヘルパーさんを依頼することにした。
今までも来てほしい気持ちはあれど、
ケアマネージャーからあまり良い返事をもらえなかったのだ。
だが、毎週金曜日に実家に通っているが、
どうしても困っていたのが、ゴミ出し問題。
朝8時までに出す、となると、
泊りじゃないと無理なのだ。
そうかと言って、毎回毎回、お泊りすると、
自宅を留守にしてしまい、
二人娘が大喧嘩したり、ゲーム三昧したり、
あまり良い事にはならない。
家の中の秩序が乱される恐れがおおいにあり。
どうしよう?
と困っていたのである。
そこで、ケアマネージャーさんに相談して、
介護ヘルパーさんを依頼することにした。
もう両親は老々介護がかなり難しいので、
そこをようやく理解してくれたらい。
実家の裏のお家のおじいちゃんが、
ヘルパーさんを依頼しているのを知っていたので、
母も大いに乗り気で、
出来ることならきてほしい、
となったのだ。
本来、他人に家の中に入られることを嫌う父と母。
父は気を遣う、母はじろじろ見られそう、と言うのが理由。
でも、認知症の父はもうあまり難しいことは言わないし、
母も、ここまで来たら、しのごの言っていられない、
と思ったようだ。
とにかく、身内でなんとかならないのなら、
誰かに助けてもらわなきゃ、となりました。
来てもらうのは、
火曜日と木曜日の朝9時前後、1時間。
火曜日は、父がショートステイに行く日で、
行かない、と駄々をこねると疲れる母が、
この日がいいと言った。
あとの1日は、本当はゴミ出しの金曜日にしたかったのだが、
介護ヘルパーさんが、持って帰ってくれる(可燃ごみに限る)そうで、
それならば、木曜日でもいいとした。
初めての介護ヘルパーさん。
どうなることやら、
心配しながら、ことのなりゆきを見ていたが、
父がヘルパーさんに失礼なことをして、
もう来ない!と叱られていないか。
母が気を使いすぎて、
ぐったり疲れ果てていないか。
ヘルパーさんが来始めてからも、
私の心配は尽きなかった。
もし介護ヘルパーさんが来てくれなくなったら、
どうすればいいんだろう。
ずっと、ずっと、
ヘルパーさんが軌道に乗るまで、
安心はできないと思った。
けれど。
そんな心配は稀有に終わった。
介護ヘルパーさんが来て、2週間がたったころ、
母が言った。
「ヘルパーさんが来てくれて、助かる」と。
ゴミ出しも心配しなくていい。
父の事を愚痴る相手が出来た。
あちこちの、掃除が行き届かないところを、
地道に少しずつ、きれいにしてくれる。
思った以上の、その働きぶりに、
母は安堵の気持ちを隠し切れないでいた。
良かったね、お母さん。
ようやく私も安心して、
父と母の事をまかせる気持ちが生まれてきた。
私だけじゃない。
ヘルパーさんがいる。
そう思うだけで、
私も重い重い荷物が、
少し軽くなった気がした。
介護ヘルパーさんが来始めてから、
2週間が経ったころ、
実家に行くと母がうれしそうに話してくれた。
「この床、見て。
ヘルパーさんが掃除してくれたのよ。
なんだか持ってきた道具で、
きれいに、こすって、汚れをとってくれたの。
きれいになってるでしょー」
家族以外の人に、優しくもらって、
心がほぐれた様子の母。
顔の表情も、
声の調子も、
まとっている雰囲気も。
やわらかく、あたたかく、
見ていてこちらまでうれしくなるようだった。
ヘルパーさん、依頼して良かった。
そう実感せずにはいられなかった。
いままで。
介護ヘルパー制度があることは、
何となく知ってはいた。
けれど、それとなくケアマネージャーさんに聞いても、
あまりはっきりとは、先に勧めてはくれない。
後でわかったことだが、
ヘルパーさんのなり手が少なく、
なかなか、介護ヘルパーさんをまわしていけないのが、
現状のようだった。
介護ヘルパーさんに来てほしい。
そう思っている人は多いけれど。
実際問題として、
人で不足のために、
希望者にすぐ配置できるものではないようだった。
どうしても、どうしても、
がんばっても、がんばっても、
必要だと判断されなければ、
来てはもらえないようだった。
難しい問題。
でも考えてみたら、
それはそうかもしれない。
しんどい仕事が敬遠される昨今。
とびぬけた高給でもない限り、
しんどい仕事を選ぶ人は少ないのでしょう。
そうかといって、介護の仕事が高給になることもまた、
難しいのでしょう。
育児も介護も。
人を相手にする仕事はしんどくて、
そしてあまり高給には出来なくて、
結果としてなかなか人が集まらない。
難しい問題。
本当はそういう現場にこそ、
手を差し伸べなくてはいけないのに。
こうした問題を考えるとやはり、
胸が痛くなる。
けれど。
うつむいてばかりはいられない。
有難いことに、実家にはヘルパーさんが来てくれたのだ。
そのことを大切に考えていきたい。
「来ていただいて、ありがとうございます」
まずはその気持ちを持って、
一緒に介護を乗り切っていく、
力強いパートナーとして、
接していけたらと思っている。
来てくれるのが、当たり前ではない。
有難い事なのだと、胸に刻んで。