冬菜かしこの「のんびり ゆっくり 親孝行」の日々

70歳代後半の親と50歳代前半の娘のゆるい介護のような親孝行の記録です

【エッセイ】ヘルパーさんを依頼

介護ヘルパーさんを依頼することにした。

今までも来てほしい気持ちはあれど、

ケアマネージャーからあまり良い返事をもらえなかったのだ。

 

だが、毎週金曜日に実家に通っているが、

どうしても困っていたのが、ゴミ出し問題。

朝8時までに出す、となると、

泊りじゃないと無理なのだ。

そうかと言って、毎回毎回、お泊りすると、

自宅を留守にしてしまい、

二人娘が大喧嘩したり、ゲーム三昧したり、

あまり良い事にはならない。

家の中の秩序が乱される恐れがおおいにあり。

どうしよう?

と困っていたのである。

 

そこで、ケアマネージャーさんに相談して、

介護ヘルパーさんを依頼することにした。

もう両親は老々介護がかなり難しいので、

そこをようやく理解してくれたらい。

 

実家の裏のお家のおじいちゃんが、

ヘルパーさんを依頼しているのを知っていたので、

母も大いに乗り気で、

出来ることならきてほしい、

となったのだ。

 

本来、他人に家の中に入られることを嫌う父と母。

父は気を遣う、母はじろじろ見られそう、と言うのが理由。

でも、認知症の父はもうあまり難しいことは言わないし、

母も、ここまで来たら、しのごの言っていられない、

と思ったようだ。

とにかく、身内でなんとかならないのなら、

誰かに助けてもらわなきゃ、となりました。

 

来てもらうのは、

火曜日と木曜日の朝9時前後、1時間。

火曜日は、父がショートステイに行く日で、

行かない、と駄々をこねると疲れる母が、

この日がいいと言った。

あとの1日は、本当はゴミ出しの金曜日にしたかったのだが、

介護ヘルパーさんが、持って帰ってくれる(可燃ごみに限る)そうで、

それならば、木曜日でもいいとした。

 

初めての介護ヘルパーさん。

どうなることやら、

心配しながら、ことのなりゆきを見ていたが、

父がヘルパーさんに失礼なことをして、

もう来ない!と叱られていないか。

母が気を使いすぎて、

ぐったり疲れ果てていないか。

ヘルパーさんが来始めてからも、

私の心配は尽きなかった。

 

もし介護ヘルパーさんが来てくれなくなったら、

どうすればいいんだろう。

ずっと、ずっと、

ヘルパーさんが軌道に乗るまで、

安心はできないと思った。

 

けれど。

そんな心配は稀有に終わった。

介護ヘルパーさんが来て、2週間がたったころ、

母が言った。

「ヘルパーさんが来てくれて、助かる」と。

 

ゴミ出しも心配しなくていい。

父の事を愚痴る相手が出来た。

あちこちの、掃除が行き届かないところを、

地道に少しずつ、きれいにしてくれる。

思った以上の、その働きぶりに、

母は安堵の気持ちを隠し切れないでいた。

 

良かったね、お母さん。

ようやく私も安心して、

父と母の事をまかせる気持ちが生まれてきた。

私だけじゃない。

ヘルパーさんがいる。

そう思うだけで、

私も重い重い荷物が、

少し軽くなった気がした。

 

介護ヘルパーさんが来始めてから、

2週間が経ったころ、

実家に行くと母がうれしそうに話してくれた。

 

「この床、見て。

ヘルパーさんが掃除してくれたのよ。

なんだか持ってきた道具で、

きれいに、こすって、汚れをとってくれたの。

きれいになってるでしょー」

 

家族以外の人に、優しくもらって、

心がほぐれた様子の母。

顔の表情も、

声の調子も、

まとっている雰囲気も。

やわらかく、あたたかく、

見ていてこちらまでうれしくなるようだった。

 

ヘルパーさん、依頼して良かった。

そう実感せずにはいられなかった。

 

いままで。

介護ヘルパー制度があることは、

何となく知ってはいた。

けれど、それとなくケアマネージャーさんに聞いても、

あまりはっきりとは、先に勧めてはくれない。

後でわかったことだが、

ヘルパーさんのなり手が少なく、

なかなか、介護ヘルパーさんをまわしていけないのが、

現状のようだった。

 

介護ヘルパーさんに来てほしい。

そう思っている人は多いけれど。

実際問題として、

人で不足のために、

希望者にすぐ配置できるものではないようだった。

どうしても、どうしても、

がんばっても、がんばっても、

必要だと判断されなければ、

来てはもらえないようだった。

難しい問題。

 

でも考えてみたら、

それはそうかもしれない。

しんどい仕事が敬遠される昨今。

とびぬけた高給でもない限り、

しんどい仕事を選ぶ人は少ないのでしょう。

そうかといって、介護の仕事が高給になることもまた、

難しいのでしょう。

 

育児も介護も。

人を相手にする仕事はしんどくて、

そしてあまり高給には出来なくて、

結果としてなかなか人が集まらない。

難しい問題。

本当はそういう現場にこそ、

手を差し伸べなくてはいけないのに。

こうした問題を考えるとやはり、

胸が痛くなる。

 

けれど。

うつむいてばかりはいられない。

有難いことに、実家にはヘルパーさんが来てくれたのだ。

そのことを大切に考えていきたい。

 

「来ていただいて、ありがとうございます」

まずはその気持ちを持って、

一緒に介護を乗り切っていく、

力強いパートナーとして、

接していけたらと思っている。

 

来てくれるのが、当たり前ではない。

有難い事なのだと、胸に刻んで。